publicrelations のすべての投稿

M2の功刀君、国際会議でYoung Author’s Award受賞

修士2年生の功刀遼太君が国際会議「MNC 2016」で行った口頭講演が「MNC 2016 Young Author’s Award」に選ばれました。

  • Ryota Kunugi, Nobuhiro Nakagawa and Takanobu Watanabe, “Molecular Dynamics study on Dipole Layer Formation at High-k/SiO2 Interface: -Possibility of Oxygen Ion Migration Induced by the Imbalance of Multipole Potentials-,”  29th International Microprocesses and Nanotechnology Conference (MNC 2016), ANA Crowne Plaza Kyoto, Kyoto, Nov. 11, 2016.

2017年11月6日~9日に韓国済州島のRamada Plaza Jeju Hotelで開催された「MNC2017」のオープニングセレモニーで、Awardの表彰式が行われました。

MNC2017で授賞式の様子(渡邉が代理出席)

功刀君(M2)の論文がAPEX誌に掲載されました

修士課程2年生の功刀遼太君が筆頭著者の論文がApplied Physics Express誌に掲載されました。

  • Ryota Kunugi, Nobuhiro Nakagawa, Takanobu Watanabe, “Driving force of oxygen ion migration across high‐k/SiO2 interface,” Applied Physics Express, Vol. 10, 031501 (2017). doi:10.7567/APEX.10.031501

MOSトランジスタの高誘電率ゲート絶縁膜に見られるしきい値シフトの起源を、分子動力学計算を用いて原子レベルで明らかにした結果を論じた論文です。

M1の大場君 電子デバイス界面テクノロジー研究会で服部賞(若手奨励賞評価・解析部門)受賞

2017年1月19日~21日に東レ総合研修センターで開催された「電子デバイス界面テクノロジー研究会」(第22回)で、修士課程1年の大場俊輔君が「シリコンナノワイヤ型熱電発電デバイスにおける短チャネル効果」と題して口頭発表行い、この発表で服部賞(若手奨励賞評価・解析部門)を受賞しました。

受賞式で挨拶する大場君 (知京豊裕先生撮影)
運営委員長の野平先生(右)と大場君(左) (知京豊裕先生撮影)

Tersoffポテンシャル

Tersoff ポテンシャルの定義

Tersoffポテンシャルは、Stillinger-Weberポテンシャルと同様、Si結晶が表現できるポテンシャルとして広く用いられている。クラスタ展開に基づくStillinger-Weberポテンシャルと異なり、各原子の局所的な環境に依存して結合の強さが変わる「ボンドオーダーポテンシャル」という思想でデザインされた。

1988年に発表されたTersoffポテンシャルの論文(Physical Review B, Vol.37, 6991)によると、以下のような定義になっている。

$$ V = \frac{1}{2}\sum_i\sum_{j \neq i} f_C(r_{ij})\left [ f_R(r_{ij})+b_{ij}f_A(r_{ij})\right ] $$

ここで\(f_R\)は等方的に働く反発相互作用、\(f_A\)は引力相互作用項で、それぞれ指数関数型の関数で表される。

$$ f_R(r_{ij})=A_{ij} \exp(-\lambda_{1} r_{ij} ) $$

$$ f_A(r_{ij})=-B_{ij} \exp(-\lambda_{2} r_{ij} ) $$

また\(f_C\)は相互作用を有限距離で滑らかに打ち切るカットオフ関数で、Tersoffポテンシャルでは

$$ f_C(r_{ij})=\left \{
\begin{array}[ll] \displaystyle 1, & r_{ij}<R – D\\
\frac{1}{2}-\frac{1}{2}\sin\left (\frac{\pi}{2} \frac{r_{ij}-R}{D} \right ), & R – D <r_{ij}<R+D \\
0, & r_{ij} >R+D
\end{array}
\right . $$

が用いられている。

ボンドオーダーポテンシャルの特徴は、局所的な環境に依存する係数\(b_{ij}\)に詰まっている。

$$ b_{ij} = {(1+\beta_i^{n} \zeta_{ij}^{n})}^{-1/2n} $$

ここで\(\zeta_{ij}\)は

$$ \zeta_{ij} = \sum_{k \neq j} f_C(r_{ik}) g(\theta_{jik}) \exp [ \lambda^3_3 {(r_{ij}-r_{ik})}^3 ]$$

と定義され、さらに\(g(\theta_{jik})\)は

$$ g(\theta_{jik}) = 1 + \frac{c^2}{d^2} – \frac{c^2}{d^2 + {(h-\cos\theta_{jik})}^2} $$

と定義されている。なお、\(\theta_{jik}\)は\(i\)を頂点とする\(j\)-\(i\)-\(k\)結合角を表す。

このように、原子\(i\)と\(j\)の引力相互作用は\(r_{ij}\)だけでは単純に決まらず、\(i\)と\(j\)を取り巻く周辺の原子たち(ここでは\(k\)でラベル付けされている)の配置にも依存して変化することになる。

Lennard-Jonesポテンシャルを用いたMDシミュレーション

原子間ポテンシャル

\(N\)個の粒子からなる系の全ポテンシャルエネルギー\(V(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2,\cdots,\boldsymbol{r}_N)\)は、1体項、2体項、3体項、・・・の和に展開して表すことができる。これをクラスター展開と呼ぶ。

$$\begin{eqnarray} V(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2,\cdots,\boldsymbol{r}_N) & = & \sum_i v_1(\boldsymbol{r}_i) +  \sum_i \sum_{j>i}v_2(\boldsymbol{r}_i,\boldsymbol{r}_j)\\
&&+\sum_i \sum_{j>i} \sum_{k>j>i} v_3(\boldsymbol{r}_i,\boldsymbol{r}_j,\boldsymbol{r}_k)+\cdots
\end{eqnarray}$$

\(v_1(\boldsymbol{r}_i)\)は1体項と呼ばれ、外力の効果を表す。第2項以降が原子間相互作用のポテンシャルである。\(v_2(\boldsymbol{r}_i,\boldsymbol{r}_j)\)は2体項、あるいはペアポテンシャルと呼ばれる。2原子間の距離\(r_{ij}=|\boldsymbol{r}_i-\boldsymbol{r}_j |\)のみに依存する場合は、\(v_2(r_{ij})\)と書ける。\(v_3(\boldsymbol{r}_i,\boldsymbol{r}_j,\boldsymbol{r}_k)\)は3体項と呼ばれ、共有結合の結合角に依存したエネルギーを表すためによく用いられる。

上の式には示されていないが、分子鎖のねじれ角の歪エネルギーを表すために4体項が用いられることもある。5体項以上は少なくとも筆者は見たことがない。ただし、配位数に応じて2体項や3体項が変化するように拡張した、いわゆる多体効果を取り入れた2体、3体ポテンシャルは無数に存在する。

有効ペアポテンシャル

共有結合のように異方性の強い相互作用がなければ、3体項以上の多体項の効果を2体項に繰り込んでしまう近似法が取られることが多い。これを有効ペアポテンシャルと呼ぶ。

$$ V \simeq \sum_i v_2^{\rm eff} (r_{ij}) $$

有効ペアポテンシャルの代表的な例が、Lennard-Jones 12-6 ポテンシャルである。

$$ v_2^{\rm LJ}(r) = 4 \varepsilon \left \{ \left ( \frac{\sigma}{r} \right )^{12} – \left ( \frac{\sigma}{r} \right )^6 \right \} $$

ちなみに\(1/r^6\)に比例する項がロンドン力、すなわち誘起双極子間に働く引力で、いわゆるファン・デル・ワールス力の主成分である。\(1/r^{12}\)に比例する項は近接反発項で、12乗という数字に特に理論的根拠はない。6乗に反比例する項より速やかにゼロに収束させるためには6乗より大きくする必要があるが、12という数が用いられるのは、単に6の2倍で、計算に便利だからであろう。

VMDによる分子の表示

1. 構造ファイルの準備

適当なテキストエディタ(メモ張、ワードパッド、秀丸など)で、次のファイルを作成する。これは水分子のxyz座標を記述したファイルである。

ファイル名:water.xyz

3
Water molecule
O  5.00  5.00 5.00
H  5.76  4.41 5.00
H  4.24  4.41 5.00
水分子の構造

 

 

2.VMDを起動

プログラムを起動すると、下図のように「VMD 1.9.* OpenGL Display」、「VMD Main」「VMD1.9.*」の3つのウィンドウが現れる。

vmd1
VMD起動時の画面

3. 分子構造ファイルの読み込み

  • 「VMD Main」ウィンドウの「File」→「New Molecule」を選択。「Molecule File Browser」ダイアログの「Filename」テキストフィールドに入力ファイルへのパスを入力。あるいは、テキストフィールド脇の「Browse…」ボタンを押して、エクスプローラを起動し、ファイルを指定する。
    ※ファイルのパスに日本語のディレクトリが含まれているとエラーになるので要注意。
  • 「Molecule File Browser」ダイアログの「Load」を押すと、ファイルが読み込まれる。
vmd2
water.xyzを読み込み直後の画面

 3. 見栄えの調整

  • 「VMD Main」ウィンドウの「Graphics」→「Representations」を選択。「Graphical Representations」ダイアログの「Drawing Method」で、たとえば「CPK」を選択すると、「VMD 1.9.* OpenGL Display」の原子が球体で表示される。
  • 「Graphical Representations」ダイアログの「Sphere Radius」を調節すると、原子を表わす多面体の細かさが変化する。
vmd3
Representation調整後の表示例

 4. VMDの終了

「VMD Main」ウィンドウの「File」→「Quit」を選択。ダイアログで「Yes」を押して終了。