完全拡散律速モデル(2)

今回は、Deal-Groveモデルに代わる、完全拡散律速モデルの式を導出します。

酸化膜中の拡散係数は、次式

D(x)={D0,x<x0LD0exp[ΔE(x)kBT],xx0L

のように、酸化膜中の大部分ではD(x)=D0で一定とし、界面x=x0近傍の厚さLの領域で拡散障壁が変化するモデルを仮定します。ΔE(x)が、遷移領域内部での拡散障壁の増分を表します。拡散係数Dが深さ依存性を持つように拡張されている点がDeal-Grove方程式との違いです。

酸化膜中の拡散フラックスF2は、フィックの法則から濃度勾配と拡散係数の積で与えられます:

F2=D(x)dC(x)dx

両辺をD(x)で割ってxについて積分すると

0x0F2D(x)dx=0x0dC(x)dxdx

F20x0L1D0dx+F2x0Lx01D0exp[ΔE(x)kBT]dx=C(0)C(x0)dC

F2D0(x0L)+F2D0x0Lx0exp[ΔE(x)kBT]dx=C(0)C(x0)

となります。右辺は、表面のO2濃度C(0)=C0と界面のO2濃度C(x0)=Ciの差となりますが、完全拡散律速モデルでは界面に到達した酸素は活性化障壁なしで直ちにSiの酸化に消費されるので、C(x0)=Ci=0と近似できます。したがって酸化膜中の拡散フラックスF2

F2=D0C0x0L+Lx0Lx0exp[ΔE(x)kBT]dx

となります。


 あとはDeal-Grove方程式の導出と同じです。

気相から酸化膜表面へのフラックスをF1=h(CC0)とし、ただいま求めた酸化膜中のフラックスF2と定常状態で釣り合うとすると、この定常状態のフラックスF

F=D0CLx0Lx0exp[ΔE(x)kBT]dxL+D0/h+x0

となります。これが、界面の単位面積で単位時間に消費される酸化種分子の個数となります。SiO2膜の単位体積当たりに取り込まれる酸化種分子の個数をN1とおくと、

dx0dt=FN1=D0C/N1Lx0Lx0exp[ΔE(x)kBT]dxL+D0/h+x0

という、SiO2膜厚x0の時間に関する新しい微分方程式が得られます。Deal-Grove方程式と同様に

dx0dt=BA+2x0

と簡略化して表記すると、ABはそれぞれ

A=2Lx0Lx0exp[ΔE(x)kBT]dx2L+2D0/h

B=D0C/N1

となります。放物型定数BはDeal-Gorveモデルの式と全く同じです。一方、定数Aの方はDeal-Groveモデルと異なります。Deal-Grove方程式では界面における酸化反応速度定数に関係しているのに対し、新しい方程式では、構造遷移領域の厚さLと構造遷移領域内の拡散障壁の増分ΔE(x)に依存する、やや複雑な式に変わっています。